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イチゴ容器の大学発ベンチャー、工農技術研究所がスタート

 昨年12月にこのwebで掲載したイチゴの1個入り固定容器の事業が新たな段階に入りました。宇都宮大学ベンチャー企業として、合同会社工農技術研究所(栃木県宇都宮市)が正式に認可されました。

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 この会社は宇都宮大学農学部准教授の柏嵜勝氏、工学部教授の尾崎功一氏らが開発した1個入り固定容器を、製造・販売します。代表は寺門孝氏です。地元の宇都宮機器の顧問であり、企業経営の経験もあるということで代表に就任しました。
 この事業文部科学省の大学発新産業創出拠点プロジェクトとして平成25年度に採択された案件です。「リスクは高いがポテンシャルの高いシーズ」を大学と民間の投資会社が手を組み事業化するのがこのプロジェクトの狙いです。その意味では、事業会社が発足したことで初期の目的は果たしたことになります。あとはいかに「稼ぐのか」、です。
 イチゴの1個入り固定容器という市場はこれまでありませんでした。そういうニーズがあるとは考えられてなかったのです。その一方、品質の高い日本のイチゴは国際的な需要があると見られており、市場開拓のためには流通の問題を解決する必要がありました。なぜなら、イチゴは傷みやすいからです。そこで考案されたのがこの固定容器でした。この構造なら、品質を維持したまま長距離輸送に耐えられるからです。
 この技術が大学発新産業創出拠点プロジェクトに採択されたのも、そこに大きなビジネスチャンスがあると判断されたからです。ちなみに、事業プロモーターはDBJキャピタルが担当しています。
 ただ、現物を見て、少し心配なことがありました。手にすると分かりますが、容器そのものはシンプルな構造であり、簡単に真似されるのではないかと思ったからです。もちろん特許は申請されていますが、海外でコピーする企業が出てくる恐れはあります。その点を、尾崎教授に尋ねると「簡単には真似できませんよ」と力強い答えが返ってきました。ここでは書きませんが、結構、いろいろ、コツがあるのです。
 果たしてどのようなビジネスが展開されるのか。今後が気になります。
 ちなみに、大学発新産業創出拠点プロジェクトの採択案件で起業されたのは、沖縄科学技術大学院大学の沖縄プロテイントモグラフィー株式会社、東京工業大学のリバーフィールド株式会社があり(いずれも2014年設立)、工農技術研究所が3社目となります。