健康茶の原料が衝撃に強い天然樹脂に生まれ変わるまで
改めて、日本の素材開発力はすごいなと思いました。日立造船のトチュウエラストマーという素材です。エラストマーは弾性体の高分子のこと。要するにゴムです。
トチュウは落葉広葉樹の杜仲のことです。その葉は杜仲茶の原料になりますが、葉や種子の果実などには天然ポリマーが含まれています。研究員の方に種子を割ってもらうと、白い粘液のようなものが出てきました。それがポリマーです。
日立造船はNEDOの支援を受けて、大阪大学、キャスコ、ウイスカと共同で種子の果実からトチュウエラストマーを開発する技術を確立しました。代表的な生分解性樹脂であるポリ乳酸に比べると26倍の耐衝撃性があるそうです。この特性を生かして、ゴルフボールの素材、炭素繊維に混ぜてCFRPにするなど、製品化を見据えています。
ところで、なぜ造船会社がトチュウなのか。スタートは1980年代の造船不況まで遡ります。日立造船は事業多角化のため、健康飲料の杜仲茶を製造、販売しました。これがうまくいって、一時は大変なブームを呼びましたが、健康飲料事業は2005年に完全に売却。残った数人の研究者が大阪大学と素材の研究を続けました。それがトチュウエラストマーとして実を結んだわけです。継続は力なり。
見えにくいかもしれませんが、杜仲のタネとポリマーです。
そこからゴルフボールになり(以下の写真は開催中の高機能フィルム展)
炭素繊維と混ぜてCFRPにもなるわけです。