ECOTECH PRESS 技術を見に行く

技術の現場から技術の先を読む    by MediaResource

天然シロップ、昆虫、カニのキチン、殺菌しない、など。いろいろあったアカデミックのバイオテクノロジー

 5月11日から国際バイオテクノロジー展(東京ビッグサイト)が開かれています。私の興味は大学のアカデミックフォーラムです。

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 医療、医薬品のイベントですが、この分野とあまり関係ない企業も参考になるようなものはないかと、探しました。で、私の目線で選択した研究成果をリストアップしました。

●『天然素材を用いた新規過冷却保存法の応用展開』
関西大学生命・生物工学科教授 河原 秀久氏
●『新しい高機能やわらかさセンサーの開発と医療展開』
京都工芸繊維大学応用生物学系 教授 山口 政光氏
●『昆虫ウイルス由来タンパク質微結晶のタンパク質コンテナへの応用』
京都工芸繊維大学応用生物学系理事・副学長 森 肇氏
●『天然甘味料メープルシロップを用いた大腸癌治療法の開発』
近畿大学薬学部医療薬学科准教授 多賀 淳氏
●『布シート電極による心電・呼吸の無拘束In-Bedモニタリング
東京電機大学 工学部電気電子工学科教授 植野 彰規氏
●『殺菌しない感染抑制剤の応用展開』
京都府立大学生命環境科学研究科准教授 宮崎 孔志氏
●『カニ殻由来の新繊維「キチンナノファイバー」の製造とヘルスケアへの応用』
鳥取大学工学研究科准教授 伊福 伸介氏
●『健康長寿に働く生理機能因子の探索と応用〜長寿遺伝子と健康〜』
筑波大学生命環境系准教授 坂本 和一氏
●『創薬資源としての薬用植物エキスライブラリーについて』
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所薬用植物資源研究センター栽培研究室長 渕野 裕之氏

 この中から取材した内容の一部を後日、アップします。
国際バイオテクノロジー展 http://www.bio-t.jp

病院も「カイゼン」でコストダウン。ただし看護は手厚く安全に。

 今年の「国際モダンホスピタルショウ2016」(主催:一般社団法人 日本病院会一般社団法人 日本経営協会)は7月13~15日に、東京ビッグサイトで開かれます。その特別企画である「第9回 こんなものを作ってみました!看護のアイデアde賞」の授賞作品が5月9日、発表されました。
 「看護のアイデアde賞」は医療従事者による現場ならではの画期的な改善の工夫やアイデアを審査し、特に優れているものを表彰しています。以下は今年の授賞作品です。

■グランプリ : 多機能枕カバー「りくつな枕カバー」
受賞団体:金沢市立病院(石川県)
■準グランプリ : 姿勢保持ベルト「どすこいサポート」
受賞団体:春日井市民病院(愛知県)
■準グランプリ : モニターコードカバー「オールインワン蛇管」
受賞団体:社会医療法人若弘会 若草第一病院(大阪府
■手放せない de賞 : バイアル瓶キャップ開栓器具「さっとポン」
受賞団体:角水医院(京都府
■心地いい de賞 : 簡易体幹保持サポート「体幹キャッチ!」
受賞団体:医療法人社団三思会 くすの木病院(群馬県
■I T de賞 : ケア情報共有ツール「e-ケアメモ」
受賞団体:新潟大学高崎健康福祉大学訪問看護ステーション、
すなやま訪問看護ステーション、近畿大学群馬県立県民健康科学大学

 2016年のグランプリは金沢市立病院の「りくつな枕カバー」です。ベッドを上げ下げしても枕がずり落ちず、手回り品も収納できる多機能枕カバーです。「りくつな」とは金沢弁で便利とか、巧みだ、そんな意味だそうです。

 このイベント、かなりユニークです。これは病院版のQCサークル活動、カイゼン活動の一環とみることができるからです。
 今年の授賞作品はまだ見ていないので、去年の例で説明しましょう。2015年のグランプリは社会医療法人若弘会若草第一病院の「洗ってネット」でした。釣り道具屋で売っているような「たもあみ」の中にビニール袋を入れ、柄の部分にはプラスチックの板を取り付けてありました。これでストレッチャーに固定するのです。

 使い方は簡単。事故などで怪我をした患者を処置する際に洗浄した排液やガーゼなどを「洗ってネット」の中に入れます。処置が終わればビニール袋ごとすぐに処理できます。コストも安く、しかも安全、簡単に処理できるのです。

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(2015年のグランプリ「洗ってネット」)

 この賞の狙いは「病院経営を支える医療安全とコスト管理」にあります。最先端医療には高価な医療機器が不可欠です。しかしその一方で、こうした地道な現場の活動が行われています。

 それだけ病院経営は難しい時代にある、と言えるでしょう。

 

5月 見に行く

 5月の「見に行く」予定です。今月の目玉は「人とくるまのテクノロジー展 2016」でしょう。自動車の研究者、技術者で構成する自動車技術会の春季大会とあわせて開かれます。東京モーターショーは2年毎の開催なので、その間の技術動向を知るにはちょうど良い展示会です。
 科学技術振興機構(JST)が主催する平成28年度の新技術説明会も今月から始まります。大学、研究機関などの新技術の説明会です。未公開特許の技術情報などもあるため、時間が許す限り私は参加しています。
 もし自分も見たいと考えた方は、必ず詳細をリンク先などで確認してください。

 

●海洋地球インフォマティクス 2016 -情報・データの科学技術が社会の新しい扉を拓く-
開催日:2016年 5月 11日(水)13:30-17:45(開場 13:00)
会場 :コクヨホール 2F
東京都港区港南1-8-35
主催 :国立研究開発法人海洋研究開発機構JAMSTEC
http://www.jamstec.go.jp/j/

 

●第15回ライフサイエンスワールド2016
第15回 国際バイオテクノロジー展( BIO tech 2016 )
第2回 医薬・診断薬 研究・開発展(PHARCON 2016)
第13回 アカデミック フォーラム
会期:2016年5月11日(水)~13日(金)
時間:10:00~18:00(最終日のみ17:00に終了)
会場: 東京ビッグサイト
主催: リード エグジビション ジャパン 株式会社
http://www.lifescience-world.jp

 

●「試作市場(しさくいちば)2016」
 「微細・精密加工技術展2016」
会期: 2016年5月12日(木)・13日(金)
10:00~17:00 〔13日は16:00まで〕
会場:大田区産業プラザPiO(東京都大田区南蒲田1-20-20)
主催:日刊工業新聞社
後援:経済産業省
協賛:公益財団法人大田区産業振興協会
http://www.nikkan-event.jp/sb/index.html

 

●第7回教育ITソリューションEXPO
会期:2016年 5月18日(水)〜20日(金)
会場:東京ビッグサイト/東京ファッションタウンビル(TFTホール)
主催:リード エグジビション ジャパン(株)
http://www.edix-expo.jp

 

●第3回SBJシンポジウム―発酵・醸造技術を軸に生物工学を考える―
日時: 2016年5月20日(金)9:50 ~ 17:10
場所: 東京農業大学 世田谷キャンパス アカデミアセンター内B1 横井講堂

主催:日本生物工学会

http://www.sbj.or.jp

 

●運輸・交通システムEXPO2016
(開催5回目:2015年は運輸システムEXPOとして開催)
会期・開催時間: 2016年5月25日(水)から27日(金)
会場 :東京ビッグサイト 西4ホール
主催 :運輸・交通システムEXPO実行委員会
http://www.truckexpo.jp/2016/index.html

 

●自動車技術展:人とくるまのテクノロジー展2016 横浜
会期: 2016年5月25日(水)~27日(金)
開催時間 :5月25日(水)、26日(木)10:00 ~ 18:00
      5月27日(金)10:00 ~ 17:00
会場 :パシフィコ横浜・展示ホール
主催 :公益社団法人自動車技術会
http://expo.jsae.or.jp

 

●ワイヤレス・テクノロジー・パーク2016
会期:2016年5月25日(水)~ 27日(金)
会場:東京ビッグサイト
主催:国立研究開発法人情報通信研究機構NICT
   YRP研究開発推進協会
   YRPアカデミア交流ネットワーク
http://www.wt-park.com

 

JST新技術説明会
05/17(火) 11:55 ~ 16:00
電気通信大学
05/19(木) 13:30 ~ 15:55
長岡技術科学大学・新潟工科大学
05/24(火) 10:00 ~ 15:25
京都大学
05/26(木) 10:25 ~ 14:55
産総研
05/31(火) 09:55 ~ 15:25
理化学研究所
主催;国立研究開発法人科学技術振興機構JST
http://www.jst.go.jp

あなたも厄介になるかもしれない介護医療器具

 医療や介護、福祉分野はまだまだ開発すべきテーマがたくさんあるんですね。介護・福祉Japan ロボット&機器開発展(4月20日〜22日)を見ると、そのことがよく分かりました。この分野は新規参入を待っています。

●排尿の勢いを診る検査装置

 装置の名前はポータブルウロフロメーター。ウロフロとはUroflowmetry、すなわち尿流測定のことです。排尿の回数、量。それから排尿の流れ具合いなどを測定します。

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 これらのデータは前立腺肥大症や膀胱炎などの症状を診断する際に、きわめて重要なものだそうです。
 使いかたは、写真の小型の装置に向けて排尿すればいいとのこと。排尿時に流量などの必要なデータを測定し、そのデータを自動的に生成。グラフ化もしてくれます。
 病院のみならず自宅でも使用できるのがこの装置のポイント。開発したのはゼオシステム(横浜市)。電子部品などを製造する会社です。

 年を取るとこうした装置の厄介になる回数が増えるんでしょうかね。

●移乗支援機能をそなえた車いす
 車いすに乗った人をベッドなどに移乗する時に、介助者の負担を減らす目的で開発されました。ベッドにあわせて車いすの高さを調整。車いすの人を介助しながら、下にしかれた布(座面布)をあわせて引っ張ります。布は滑りやすい特殊な素材でできているため、介助者の負担がその分、減る仕組みです。

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 試作、設計したのはヨコキ(横浜市)。自動車の部品、装置などを開発している会社です。
 介助される側はもちろんですが、介助する人たちにとっても負担が少なくなる、そのような視点の介護機器が求められているのです。

 

 

 

航空機用の革新的素材開発で分かる日本の技術の行く末

 内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)は10のテーマがあります。そのひとつ、革新的構造材料の成果報告会が4月26日にありました。何とも厳めしい名称ですが、CFRP、耐熱合金など、航空機用の先端材料の研究、開発が目的です。

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 日本の素材技術は先端を走っています。新素材は実用化までに時間がかります。欧米のように短期間に結果を出さなければならない企業の経営スタイルではなかなか手が出せません。しかし成果をすぐに求めない日本の経営スタイルは素材開発にあっているともいえます。炭素繊維などはその典型でしょう。ただ、それも変わりつつありますが。
 日本はこれまで造船、鉄鋼、半導体、液晶など。コアとなっていた技術が中国、韓国とのコスト競争に負け、苦戦を強いられました。航空機はコストだけでなく、安全性、信頼性と同時に性能が求められる分野です。日本の素材開発もここが踏ん張り所なのです。
 このプロジェクトは実用化までの期間を短縮するため、基礎から応用展開まで、同時並行で進める手法をとっています。2030年までに部素材出荷額で1兆円。これが目標になっているようです。果たしてどうなるか。

いずれ見慣れた光景になる、アシストスーツ姿

 写真の装置は東京理科大学ベンチャーのイノフィスが販売しているアシストスーツ「マッスルスーツ」です。今年3月発売されたばかりの新モデル。写真の小さなポンプを手押しすると、「人工筋肉」に空気が注入され背中を引っ張り、作業を補助する構造になっています。

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スタンドアローンタイプ。重さ4.7kg)

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(黒いチューブが人工筋肉)

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(小型の手押しポンプ。介護・福祉ロボット&機器開発展にて)
 私も試着しました。人工筋肉に空気が入ると身体に相応の負荷はかかりますが、荷物の持ち上げは装置を付けない状態よりは楽になりました。

 写真のスーツはスタンドアローンタイプです。昨年発売されたタイプは人工筋肉にエアーを送るコンプレッサーとつながっているため、移動などが制約されます。それを改善したのがスタンドアローンタイプです。コンプレッサーやバッテリーなどが一切不要。これが最大のメリットといえるでしょう。
 ユーザーは介護医療、物流、農業、それからパチンコのホールだそうです。パチンコ台の入れ替え作業で使用するとのこと。パチンコ台は重いんですよ。

 値段は1機60万円(税抜き)。売れ行きは悪くないそうです。
 この分野には追い風が吹いています。厚生労働省が介護ロボット等導入支援特別事業 として、平成27年度補正予算で52億円を計上したからです。
 アシストスーツを装着した姿は今後、介護医療、物流など、力仕事を要求される現場では珍しくはなくなるかもしれません。それぐらい確実なニーズがある、そう感じます。

建設会社が考えた、地域活性のトリガーになるドローンスクール

 この発想もいいなと思ったのが、山間のドローンスクール事業です。仙台市の高野建設は宮城県丸森町とパートナー協定を結んで、ドローンの操縦などを教えるスクール事業を始めます。

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(国際ドローン展)

 座学6時間、実技20時間といったコースを設定。子どもから大人、さらには企業などを対象に開校するとしています。6月にプレスクールを開く予定です。
 丸森町宮城県の南部にあり、人口は約1万4400人。町内には体育館、グラウンドなど、ドローンを飛ばすスペースは十分にあります。高野建設は災害復旧工事の撮影などにドローンをすでに導入しており、操縦、利用のノウハウはあります。それをスクール事業に活かそうというわけです。
 ただし、スクールはとっかかりにすぎません。町内には空き家があり、そこに町外から企業や人を呼び、ドローンの開発、あるいはサテライトオフィス、移住などなど。いろんな活用をしてもらことで地域活性に結びつけたい、そこに狙いがあると言いました。
 地域活性には、地元に人とお金、事、さらにはノウハウが残る仕組みが不可欠です。