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技術の現場から技術の先を読む    by MediaResource

2014年も、それ以降もエネルギーが主役の環境ビジネスになると予測できる理由のひとつはシェール革命

 アメリカは原油、天然ガスなどのエネルギーを自国の安全保障とリンクさせ、戦略的にとらえている国です。解禁してもいいのではという議論もあるようですが、アメリカは原油輸出を禁じています。天然ガスについては、FTA(自由貿易協定)を締結していない国への輸出を厳しく規制してきました。そのアメリカが日本への天然ガス輸出を2017年から解禁するとしたのです。

 原発の再稼働をめぐる議論が二分されている国内の状況にあって、アメリカが天然ガスの対日輸出を解禁すると決定したことは、大きなインパクトがありました。

 政治的なことは別にして、シェール革命が日本にどのような影響を及ぼすのか。いろいろな業界があるので、一概にはいえませんが、自動車、それもグリーンカーの普及には微妙な影響があると思っています。

 というのも、アメリカは自動車のCO2対策として、バイオエタノールなどのバイオマス天然ガスを燃料としたグリーンカー戦略を推進しているからです。どちらの原料もアメリカには豊富にあります。豊富にあるということはコストも安くなります。

 燃料が安いかどうかは、アメリカの消費者にとって重要な自動車購入の選択肢になります。天然ガス車やバイオエタノール車は、プラグインハイブリッド車燃料電池車に比べると、開発コスト、製造コストはかかりません。安いのです。当然、アメリカ市場では相対的にコストの安いバイオエタノール天然ガスのグリーンカーが有利でしょう。

 では、日本の自動車メーカーは天然ガス車をどう見ているのでしょうか。いまのところ、天然ガスを明確に意識した戦略を表明したのは、いすゞ自動車だけです。

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(写真はいすゞ自動車のCNG車)

 いすゞ自動車は2017年の天然ガス対日輸出解禁を睨んで、新たな天然ガス車の開発に動いています。2015年に圧縮天然ガス(CNG)仕様の大型トラックを市場に投入。その後、できるだけ早い時期に液化天然ガス(LNG)仕様のトラックを投入すると明言しています。

 LNG車はCNG車に比べて、同じ容量の燃料タンクならば、3倍の走行距離をかせぐことができます。これはLNGの大きなメリットです。走行距離をかせぐことができれば、仮にLNGスタンドの数が限定されていても、実際の運転に支障は少なくなります。

 しかし欠点もあります。LNGは液体ですから、燃料タンクは断熱を高める構造になるため、CNGタンクよりも重くなる可能性があります。タンクが重いとトラックとしての最大積載量がかせげなくなります。つまり、走行距離と積載重量、コストのバランスを最適化したLNG車の開発をどう実現していくのか。それが重要になるのです。

 LNGの供給インフラの整備も不可欠です。法律的に想定されていない世界だからです。LNG普及といっても、やるべき課題があまりに多いのです。

 こうした背景もあって、日本の自動車メーカーは天然ガス車、とりわけLNG車の開発にあまり関心はありませんでした。

 しかし、先ほども述べたように、アメリカ市場では天然ガスは重要な燃料になります。それに、走行距離のことを考えるとLNG車が有利です。それを考えると、日本の自動車メーカーにとって、LNG車は悩ましいところだと思います。