ECOTECH PRESS 技術を見に行く

技術の現場から技術の先を読む    by MediaResource

東京に出張中でもイノシシ、サルを捕獲できる害獣駆除システム

 害獣駆除とICT(Information and Communication Technology)。この組み合わせはやはり気になります。つい、ブースの前で足を止めました。「まる三重ホカクン」です。三重は「みえ」と読むので、「まるみえホカクン」となります。三重県農業研究所、鳥羽商船高等専門学校半導体などの設計会社であるアイエスイー(三重県伊勢市)が共同で開発しました。

f:id:take4e:20141203212957j:plain

 仕組みを教えてもらうと、なるほどと思わせる説得性がありました。簡単にいえば山中などに罠や檻を仕掛け、シカ、イノシシ、サルなどの加害獣を捕獲する装置です。普通の檻との違いは、スマートフォンやパソコンを使ってネットワーク経由で遠隔監視、操作できる点です。
 装置はネットワークカメラ、赤外線投光器、ソーラーパネル、バッテリー、制御ボックスなどから構成されています。
 加害獣が罠や檻に侵入するとゲートに取り付けたセンサーが感知し、その情報を自動的にメールで「管理者」に知らせます。メールには該当する場所のURLが書かれています。URLをクリックすると、ネットカメラの動画がリアルタイムで表示され、罠の状況が分かります。
 管理者はweb画面を見ながらタイミングを見計らって、画面のボタンを押せば柵や捕獲用のネットが落ちて加害獣を一網打尽にできるわけです。ネット経由ですから、スマートフォンさえあれば、会議中でも、通勤電車の中でも、山中の加害獣を捕獲できます。これが一番のメリットでしょう。
 ちなみに、檻の操作は誰でもできるわけではありません。狩猟免許(檻罠)を持つ人のみだそうです。
 加害獣の駆除は普通は人手をかけて行います。狩猟は限られた人たちが、限られた時間の中でしか対応できません。罠は捕獲できたかどうか、確認の必要があり、現場に立ち入る手間が大変です。
 その一方で、加害獣は頭数が多く、一度に複数頭を捕獲するのは大変です。そこでICT対応の加害獣駆除システムが生まれたわけです。
 気になるのはメンテナンス性です。罠は不便な場所に設置されるケースが多いでしょうから、人が簡単には行き来できません。故障したら、それだけで膨大な時間と手間、つまりカネがかかります。
 カメラやライトなどの電源は太陽電池と鉛バッテリーを使っています。柵や捕獲用ネットはフックではなく、永久磁石で固定しています。機械式よりも故障が少ないとの判断で導入したそうです。どんな最新鋭のシステムでも、肝心の柵が故障したら何の意味もありませんから。
 定価は85万円ということですが、実売は多少変わるのでしょう。2年前から売り出し、北海道から九州まで、全国で60台ほど売れたそうです。アイエスイーは小さな会社です。営業は殆どが自治体の研修会、イベント、展示会でのアナウンス。それでビジネスになっているとのことでした。
 人と野生動物の境界線が曖昧になったいま、加害獣対策は大きな問題になっています。しかしカネはかけられない,人手もかけられない、そんな困った状態の中で生まれた技術といえます。不満を解消する技術を作れば市場の扉は開く、ということでしょう。