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賃貸アパート形式の植物工場が農の流動化を促す

 日本で農業が生き残るには、新しい人たちが農に参加することが不可欠だと私は思っています。人の流動化です。もちろん異論はあるでしょうが、農業とは別な視点を持つ人たち、それが企業でも構いません、が入ることで、全く異なる新しい農業が見えてくる可能性があるのです。その試行がいま日本の農業で一番必要なことだろうと。
 植物工場はそのきっかけのひとつになるでしょう。計画生産できる植物工場は企業にとっては魅力的です。ただし設備やエネルギーコストが高い。それが壁になっています。しかしレンタル、賃貸なら、話は別です。資金的なリスクが小さくなるので、企業だけでなく、個人でもやれると思う人が出てきます。
 農業資材販売のクレイスランド(東京)は賃貸型植物工場を来年からスタートさせる計画です。意欲はあるけど、資金力、農業ノウハウのない就農希望者がターゲットです。千葉県八街市にハウス施設タイプの植物工場を建設。貸し出します。

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(写真下は植物工場の監視システム。施設内の映像や、温度、湿度などが表示される)
 
 ハウス施設の面積は1件当たり660平方㍍。これは1人で栽培できる規模だそうです。月額賃貸料は24万円。管理費が3万円。そのほか、保証金が月額賃貸料の3カ月分必要です。
 同社のシミュレーションでは、トマト栽培なら、年間17トン程度の収量が見込めます。売り値を1キログラム当たり600円程度とすると、売り上げは年間約1000万円。施設の賃貸料など、経費を差し引くと約400万円の収益になるとしています。
 もちろん、シミュレーションですから、この通りになるとは限りません。それは留意してください。
 来年度中に15棟を建設する計画で、第1期は来春に5棟が完成します。すでに5件の入居者は決定したそうです。
 なぜ賃貸型の植物工場なのか。グレイスランドの副社長、渡邉誠一氏によれば、個人の就農希望者はたくさんいるが、一番ネックになっているのが資金。未経験者に金融機関は簡単には融資をしてくれない。それならトライアルで、経験を積み、その上で本格的な農場へ展開してもらえばいいと、賃貸型を考えたそうです。収穫したトマトは自由に販売してもらってもいいし、同社が買い取ることもできるとしています。
 グレイスランドは本格的な植物工場のフランチャイズ展開も始めています。トライアルとしての賃貸型植物工場で、栽培ノウハウ、経験をつんでもらい、より規模の大きな植物工場へステップアップしてもらえば、同社としてもメリットになるというわけです。
 今後、こうしたビジネスモデルの農業施設が増える可能性は大いにあります。ただし、収益をある程度、担保できる仕組みをどう作っておくかが、ポイントになるでしょう。