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ダウンコートで発電できる? 厚膜の熱電変換材料を開発、東京農工大

 この材料を糸と一緒に衣類に織り込んだらどうなるか。布団の綿と一緒にする、いや、太陽電池と組み合わせて屋根に使ったらいいかもしれない。いろいろな妄想が浮かびました。
 東京農工大学大学院の下村武史教授が開発した高分子厚膜体の熱電変換材料です。物質の両端に温度差を作ることで発電するのが熱電変換材料です。発電能力は断熱性、導電率などによって変わります。

 広く知られているのは無機材料。排熱などを利用する熱電変換デバイスは既に実用化されています。しかし有機の熱電変換材料はまこれからです。

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 下村教授が開発したのは導電性の高いポリチオフェン系導電性ポリマーです。

 映像を見ただけですが、この材料で作った小さな球を指で摘むと簡単に潰れますが、離すと復元しました。弾力性、フレキシビリティのある材料なのです。
 有機系の熱電変換材料の研究者たちは、これまで薄膜の開発を中心に進めてきたそうです。
 しかし下村教授は薄膜では断熱性が高くとも薄いのですぐに温度差がなくなり、実用には向かないと考え、厚膜の開発へと方向転換しました。
 厚膜は樹脂を発泡することで作っています。発泡によって空気層ができるので、厚みと断熱性を維持できるのです。しかし逆に導電率が悪くなります。
 発泡技術や、導電率をどう改善していくのか。課題はまだありますが、高分子の実用的な熱電変換デバイスができれば用途はぐーんと広がります。

 ちなみに、つい最近、特許出願された技術です(6月16日、科学技術振興機構で発表)。