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環境技術と環境ビジネスの少し先を読む

無名の会社でも世界をリードできる、トップスタンダード制度

 前回(従業員43人のベンチャー企業が提案した規格を、ISOが承認へ)の続きです。

 無名の会社が開発した新技術が世の中に認められ、普及していくのは簡単ではありません。製造に関わる技術の場合は、なおさらです。開発された多くの技術は消えていく運命にあります。残るのは本当に僅かです。

実績がなければ相手にされないベンチャーの新技術

 日本の多くのユーザー企業は技術の導入を検討する場合、その技術の実績で判断する、それが現状です。ユーザーの関心は、これまで、どんな企業が導入したのか。大手企業なのか、業種は何か。導入した会社の素性を知りたがります。

 もちろん彼らが望んでいるのは誰もが知っている大きな会社が導入したケースでしょう。もし、自動車メーカーが導入している技術なら導入検討リストの最上位にランクされるはずです。しかしベンチャー企業の、それも生まれたばかりの技術にそんな実績を求めるのは無理な話です。

 大成プラスにとって、実績のなさは大きな壁でした。それに、新しい技術のため、機能、性能を客観的に評価する標準的な試験方法がなかったことも不利でした。見えない壁に行く手を阻まれていたのです。しかし彼らは幸運でした。

知財と国際標準化が技術競争力の源泉

 2011年頃から、経済産業省は「技術力とともに、国際標準化を含めたビジネスモデルの構築が企業の国際競争力を決定的に左右」するとして、国際標準化を「迅速に行う」ための仕組みづくりを急いでいました。そこで登場したのがトップスタンダード制度です。

 国際特許を取得するのは企業の競争力という点で重要といわれてきました。しかし「技術を価値につなげるためには、特許だけでも、標準だけでも不十分。オープン・クローズ戦略など知財と標準化を組み合わせたより高度なマネジメントが必要不可欠」というのが経済産業省の認識でした。

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(写真は本文とは関係ありません)

 提案までの国内コンセンサスだけで2,3年かかる

 日本は国際標準化という点ではアメリカ、韓国などに比べて遅れをとっていました。そのネックになっていたのが国際機関に提案するまでにかかる国内の「時間」でした。

 国際標準化機構(ISO)、国際電気標準会議(IEC)への規格提案は、日本の場合、業界団体などのコンセンサスを経て行われるのが一般的なルートです。しかしこれが大変で、国内コンセンサスを得るのに2、3年の時間がかかるといわれています。国際機関の審査は3〜5年。すなわちトータルで5年から8年といった時間がかかるわけです。

 そこで経済産業省は新たなルートを設けました。新技術を開発した企業やグループが自ら提案した標準規格案を、日本工業標準調査会が2,3カ月で審査を行い、国際標準化機関へ提案するという仕組みです。これによって国内審査の時間は大幅に短縮できます。その最初の案件のひとつとなったのが大成プラスの接合技術でした。

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ベンチャー企業の評価にも使えるトップスタンダード制度

 大成プラスの接合技術は客観的に評価する試験方法が確立されていないことが課題でした。そこで大手樹脂メーカーの東ソー、東レ三井化学を巻き込み、「樹脂-金属異種材料複合体の特性評価試験方法」として、2013年4月に正式にISOに提案されました。

 大成プラス経済産業省の協力をあおぎながらISO取得に動き始めたのは2012年2月頃。ISO提案のための研究会が設立されたのが同年10月ですから、実にスピーディーな動きといえます。

 中小企業経営者の中には、自分たちの技術が普及しないのは業界の保守的な体質のせいだと、嘆く人がいます。もちろん嘆くのは自由ですし、批判も自由。それで「保守的な体質」が変わるのならいいのですが、そうはいきません。嘆く前に、その壁を突破するための行動に出るべきなのです。

 ベンチャー企業がこの制度を利用して成功すれば、後に続く企業も出てくるはず。彼らの結果報告が待たれます。