読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

武末高裕のECOTECH PRESS 技術を見に行く

環境技術と環境ビジネスの少し先を読む

林地残材のトドマツの葉から浄化剤を作ったエステーは地元の救世主か

 もう1カ月ほど前になりますが、イノベーションジャパンで見かけた技術のことを紹介しておきます。こういった展示会には珍しく、このブースでは販売中の商品がずらりと並べられていました。

f:id:take4e:20141016220920j:plain

f:id:take4e:20141016220935j:plain

(抽出装置の映像。手前はトドマツの葉と精油の瓶)

 知ってる人もいるでしょうが、イノベーションジャパンはJST(科学技術振興機構)やNEDO新エネルギー・産業技術総合開発機構)などの支援を受けた大学、研究機関、企業の研究成果のイベントです。ユニークな研究、技術がたくさんあるので毎年出かけています。もちろん、玉石混淆ですが。
 話しを戻すと、この商品はエステーのクリアフォレストという室内や車内で使う空気浄化剤です。独立行政法人森林総合研究所と日本かおり研究所(エステーの子会社)が共同研究したトドマツの葉の精油がこの商品に使われていました。精油にはβ-フェランドレンという物質が多く含まれており、空気中の二酸化窒素と結合して、瞬時に無害化するということです。それが特徴です。
 トドマツの葉は伐採段階で切り取られ、山中に放置される林地残材として、これまで使われることはまず、ありませんでした。それを原料として使ったのです。
 この手の商品はどちらかというと中小企業が作るケースが多く、エステーのような大手メーカーが商品化するのは珍しいことです。林地残材は運搬や量の確保などで製造コストが割高になり、採算がとれないのが常識。それを、エステーは量産レベルの商品として事業化したのです。
 なぜ事業化できたのか。事業部長に尋ねると、精油が効率的に抽出できる技術を開発できたからと、答えました。彼らが新開発したマイクロ波減圧装置が使われています。簡単にいえば電子レンジでチンするようなものだけど、減圧しているので沸点が下がり、高純度の成分を壊さず短時間で抽出できる、そこがミソなのです。製造コストも従来の水蒸気蒸留法に比べて5分の1にまで低減できる、だから事業化できたのです。
 もっと詳しい技術の説明は受けましたが、さすがにトドマツの精油が商品にどの程度入っているのかは、教えてもらえませんでした。
 抽出プラントは北海道の釧路近郊にあります。装置の扱いは簡単で、操作は地元の森林伐採の作業員が担当しています。この辺りの地形はなだらかで、運搬などの手間があまりかからず、コスト面で有利ということでした。
 地元では、どうしようもなかった葉っぱが地域の活性化につながると、大いに期待しているようです。もちちろんエステーという大手企業の事業だから、という点も見逃せませんが。北海道の高橋はるみ知事も見学にこられたことがあるそうです。この技術は産学官連携功労者表彰農林水産大臣賞を受賞しました。
 なお、トドマツの成果はエステーが進めている森林研究の一部でしかありません。もっといろいろやっているのです,彼らは。