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減るどころか増えている、ヨーロッパのロシアに対する天然ガス依存度

 7月17日、むごたらしい「殺人」がウクライナ上空1万㍍で起きました。世界は緊張しました。アメリカ、EUはロシアと決定的な対立へと進む。そう想像した人たちもいました。もちろん、それは悲劇とそれがもたらす悲しみ、怒りがもたらす当然の見方でしょう。しかし、エネルギーという利害関係の中では、そうした見方は必ずしも支配的ではありません。
 そもそもウクライナ問題でのロシアに対する制裁に、EUは積極的ではありませんでした。なぜか。
 ヨーロッパが輸入するガスのうち、もっとも多くを供給している国はもちろんロシアです。知っておくべきはそのウエイトです。2012年はロシアからの供給は29.1%を占めていました。それが2013年は36,2%と、減るどころか逆に増えています。
今年6月に開かれたG7ではロシア産ガスの依存度を減らし、調達先を多様化するという方針が確認されましたが、それがすぐに実現できるとは誰も思っていません。ヨーロッパがロシアからのガス輸入量を減らした場合、それを安定的に補える他の国はないからです。
 アメリカ国内も一枚岩ではありません。オバマ大統領はロシアに対する制裁を強めましたが、全米製造業者協会とアメリカ商工会議所は6月、ウォールストリートジャーナル、ワシントンポストニューヨークタイムズに意見広告を掲載。ロシアに対する追加制裁がアメリカの労働者、企業に悪影響をおよぼす恐れがある、などとして制裁に反対の立場を表明しました。
 オイルメジャーの動きはもっと露骨です。アメリカのエクソンモービル、イギリスのR/Dシェル、ノルウェーのスタットオイル、フランスのトタル、イギリスのBPなどはロシアで大規模な天然ガス、石油の開発事業を進めています。5月にサンクトペテルブルグで開かれた経済フォーラムにはBP、シェル、トタルエクソンモービルの首脳クラスが出席しました。6月にロシアで開かれた世界石油会議では、エクソンモービルCEOのレックス・ティラソンは、制裁対象になっているロシアの経済人と並んで登壇しました。アメリカでは制裁対象となっている人物とビジネス会話するなどの行為は禁止されているそうです。
 悲劇とエネルギーという物質活動の根幹は相容れないファクターだということです。どちらを基準にして見るかは、あなたの価値観、立場次第でしょう。
参考資料;JOGMEC2014年7月「露中天然ガス合意と ロシア・ウクライナ情勢」