従業員43人のベンチャー企業が提案した規格を、ISOが承認へ
順調に進んでいるなら、そろそろアナウンスがあると思うので、この記事をアップしました。
今年4月にNEDOの構造材マルチマテリアルシンポジウムで大成プラス(東京)の講演がありました。担当者によれば、もうすぐISO(国際標準化機構)の承認がおりる見込みだと語っていました。その規格とは「樹脂-金属 異種材料複合体の特性評価試験方法」のことです。
異なる素材同士を接合する技術の重要度
会社名は忘れていましたが、異種材料の接合技術と聞いて思い出しました。異種材料接合とはプラスチックと金属のように、異なる材料を接合する技術のことです。
自動車、家電製品などでは多くの種類の金属や樹脂が使われていますが、これら素材の接着は品質、性能、コスト、省エネなどの点で重要な技術なのです。大成プラスがISOに提案したのは、異種接合技術の性能を評価するための試験方法です。
この話にはポイントが2つあると思っています。ひとつは、大成プラスが従業員43人のベンチャー企業であるということ。技術を発案し、開発した創業者はすでに経営の第一線から退き、群馬県にあるボタン製造会社のアイリスが経営を担っています。要するに中小企業が国際標準の規格を提案したことがミソなのです。
もうひとつはこの評価試験方法がISO規格として承認される(見込みの段階ですが)までの期間が、提案のための国内協議を始めてから3年半ほどであることです。これは従来の半分程度の時間しかかかっていません。なぜこれほど短縮できたのか、です。
ナノオーダーのくぼみを空けて接合
大成プラスの異種材料接合はシンプルな技術です。アルミニウムやステンレスのような金属の表面に薬剤を使って無数の、ナノオーダーのディンプル(くぼみ)を空けます。これらのディンプルに射出成形で樹脂を流し込み、金属と樹脂をがっちりと接合させるのです。それもかなり強固な接合状態を保てるという内容でした。
私は以前、展示会でこの技術の実演を見たことがあります。それで印象に残っていたのです。どんな実演かというと、ハンマーで樹脂の棒が接合したアルミの板を思い切り叩くのです。がっちり接合している様子を見せるのが目的でした。ハンマーで叩いても樹脂の棒は剥がれることはなく、むしろアルミの板が折れ曲がったことを記憶しています。
大成プラスは2004年のナノテク展で表彰され、一定の評価を得ていました。しかしそれがビジネスに結びつくかどうかは、また別な話なのです。
(つづく)