ウェアラブル用の生体センサーに天然素材を使う意味。
写真は住江織物が開発中のセンサー用の布帛(ふはく)電極です。金属メッキをほどこした繊維を織り込んでいるため、導電性があります。これを身体に触れる衣類に埋め込めば、心拍数などの生体情報を計測するセンサーとして活用できます。
この布帛電極に前回の記事で紹介した日立造船のトチュウエラストマーが使われていました。
布帛電極をルーペで見ても金属メッキ部分は分かりません。トチュウエラストマーを独自の紡糸技術で織り込んでいるためです。
トチュウエラストマーは伸縮性があるため着心地がよくなる利点があるそうです。しかし他にもそういった素材はあると思うのですが。なぜトチュウエラストマーなのかと尋ねたら、なるほどという答えが返ってきました。
ポイントは肌に触れる素材という点でした。生体情報計測センサーですから、長時間、身体に接触する場合を想定し、肌に優しい天然素材であること。なおかつ安全性の高い素材であること。この条件を満たすものとしてトチュウエラストマーに着目したとのことでした。
トチュウエラストマーは天然ゴムと同じ仲間ですが、両者には大きな違いがあります。天然ゴムはタンパク質を含んでおり、人によってはアレルギーを起こすことがあります。いわゆるラテックスアレルギーです。
しかしトチュウエラストマーにはタンパク質は含まれていません。そこに意味があったのです。現在、安全性を評価しているとのことでした。
身体に触れるものだから、より安全性を担保すべき。
生体情報計測センサーはウェアラブル機器の実用化には欠かせない技術です。これを詰め込んだ衣類を高齢者や病人などが着用すれば、健康管理の面で威力を発揮するでしょう。
東レとNTTが共同開発したhitoeは、ランニングウェアにセンサーを埋め込み、取得した生体情報をスマートフォンに送り、確認するシステムとして、注目を集めました。
(東レとNTTが開発したhitoe)
今後、センサーを取り付けたウェアラブル商品が市場に投入されることでしょう。しかしセンサーが人に接触すること。それも長時間にわたって触れる可能性があることを考えると、ウェアラブル機器の安全性をどこまで担保できるのか。そこが普及のための重要なポイントになるのではないかと思っています。