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新エネルギー対策課の元課長は、やってみなきゃ分からないことがたくさんあった、と語った(その4)

 今回は、なぜ太陽光発電が年度末かけこみ認定の圧倒的多数を占めたのか。その直接的な原因の残りを分析します。

50kW以上の太陽光発電に6カ月ルールが適用

 経済産業省資源エネルギー庁は平成26年3月28日付けで、「平成26年度の認定運用を変更します」という文書を発表しました。これがいわゆる「6カ月ルール」です。内容は以下の通りです。
「固定価格買取制度の認定について、平成26年4月1日に到達した申請から、以下の通り運用を変更し ます。
 平成26年4月1日以降に認定の申請が到達した案件に対しては、認定後180日を経てもなお場所及び設備の確保が書類により確認できない場合、認定が失効するよう、運用することとします」
 対象とする設備は「50kW以上の太陽光発電設備」としました。では、なぜ運用を変更したのか。
「認定を受けながら理由なく着工に至らない案件があるとの指摘を受けて、平成 25年9月から、平成 24 年度中に認定を受けた運転開始前の太陽光発電設備(400kW 以上)に対し法に基づく報告徴収を実施したところ、認定後 1 年弱の期間を経てもなお場所も設備も確保されておらず、買取価格を維持することが妥当とは思われない案件の存在が明らかとなりました」
 設備コストが安くなってから着工すれば、利ざやが稼げるというわけです。以前から、こういった事業者がいることは批判されていました。経済産業省はその対抗措置をとったわけです。
 そこで、一部の事業者は「6カ月ルール」を回避するため、ルール変更の適用を受けない平成26年3月末までに認定されようと動いた、と見られています。
 「6カ月ルール」では土地の登記簿、設備の発注書が180日以内に提出されないと、設備の認定が失効します。ただし再度、認定の申請は可能です。もちろん、その場合は以前の「高い」調達価格は適用されません。

電気主任技術者が不要になる低圧敷地分割は認めない

 太陽光発電の低圧敷地分割の中止措置も駆け込み申請の一因といわれています。明らかに同じ敷地内なのに、50kW未満の小規模低圧施設を複数連系させた施設として電力会社に申請するケースです。50kW未満の場合は電気主任技術者は不要になるなど、事業者にとってのメリットがあります。
 私もこの類の太陽光発電施設を見たことがあります。整地した場所に直接、太陽光パネルを設置する「野立て」というタイプです。この案件はまだ工事中で、全体の規模は800kW程度でした。どう見ても、全部が同じ敷地に設置されている一体化した太陽光発電としか思えませんでした。ところがオーナーは「仕切り」を設けて、50kW未満の単位で受電設備をつけた低圧連系の施設だと、満足げな表情でした。
 この「小細工」をやられると、電力会社は本来立てなくてもいい電信柱などの設置費用が必要になります。新エネルギー小委員会の買取制度運用ワーキンググループでは、こういった案件は非効率と判断され、平成26年4月1日以降、低圧敷地分割案件は認められなくなりました。

新エネルギー対策課の元課長はこう発言した

 話しは前後しますが、認定を受けながら着工しない案件が出てくる可能性はある程度想定していたと、新エネルギー対策課の元課長、村上敬亮氏は語っています。
「6カ月ルールは最初の時にも議論はあった。それが6カ月がいいのか、1年がいいのか、分からなかった。ひとつひとつこういう感じで、やってみなきゃ分からない、そういう状態だった」
 村上氏はFITの法案作成の現場責任者で、「ミスターFIT」と呼ぶ人もいました。
 やってみなきゃ分からない、官僚がそんないい加減でいいのか、と思う人もいるかもしれません。しかし、FITはもちろん日本では初めての試み、制度です。やらなければ分からないことはたくさんあるものです。制度上の不備もあるだろし、詰めの甘い部分もあるでしょう。それは現在の批判、混乱からも明らかです。しかしこれらは制度を修正し、制御していけばいいのではないか。最初から完璧な制度なんかありません。
 なお、村上敬亮氏は7月4日付で新エネルギー対策課長から経済産業政策局調査課長へ異動。さらに10月1日付けで内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局参事官に異動しています。
(まだ、続きます)