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世界の原油価格は下落傾向にある、その要因はなに

 JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)のブリーフィングが10月23日、開かれました。その中で原油相場の分析も発表されていたので紹介しておきます。

石油の値段が下がって、木質チップ事業がやられた過去

 その前に環境技術と原油相場の関係です。CO2排出量の問題もあるのだけど、環境ビジネスそのものに原油価格の変動は影響します。
 かつて、石油価格の変動で、国内に芽生えつつあった木質チップビジネスが壊滅的な打撃を受けたことがありました。1980年代の初め頃のことですが、旧通産省の後押しを受けて燃料用の木質チップ製造工場が東北や四国などに次々、誕生しました。それは「国策」だったと業界関係者、要するにその話にのった経営者ですけど、彼はそう言っていました。しかし1985年のG5におけるプラザ合意で為替相場が円高ドル安基調となり、石油の輸入価格が下落。その結果、価格競争力を失った木質チップ事業はほとんど消えたのです。その復活までには本当に長い時間がかかりました。
 もちろん、当時と違って、日本のエネルギーに占める石油の構成比は下がっているので同じように見ることはできませんが、しかし頭に入れておくべきことです。

需要側はアメリカ好調、欧州、中国の経済は要注意

 ということで本題に入ります。JOGMECによれば、世界の原油相場はこれから冬場を迎えるため季節変動はあるにしても、基本的には下落傾向にある、この流れは変わらないだろうということでした。その理由を需要側面と供給側面から分析しています。
 需要側ではアメリカ、欧州、中国の経済が指標になります。アメリカは失業率は改善。GDPは2013年を2010年との比較で見た場合、約6%伸びているが、逆に石油需要はマイナス2%弱と落ち込んでいます。国内のシェールオイル生産量は順調に伸び、原油の生産量は1985年頃と同水準にまで回復しています。その一方、原油の輸入量は減る方向にあります。つまり、アメリカ経済は好調で、国内の原油生産量は増えているが、海外の石油に対する依存度は減る傾向にあるということです。
 欧州経済はよくありません。ウクライナ問題、牽引車であるドイツ経済の不調がマイナス要因です。中国経済も懸念がさらに広がっています。今年7月ー9月期のGDPは前年同期比7.3%増と発表されましたが、この数字は2009年1月ー3月期の6.%増以来の低い伸び率だったからです。
 以上からすると、世界の原油需要の伸びはあまり期待できないということになります。

イラクなど、地政学的リスクはどうなっているのか

 では、供給側の事情はどうなっているのでしょうか。地政学的リスクのあるイラン、イラク、シリア、ロシアがポイントです。
 ウラン濃縮問題で制裁を受けたイランは対「イスラム国」でアメリカ、欧州との対立構造に変化の兆しが出ています。イラクは「イスラム国」との戦闘で危険度は増したけれど、原油生産の主力は南部にあり、大きな影響を受けていません。リビアは政情不安はありますが、原油生産量は今年7月から伸びています。ウクライナ問題で制裁を受けているロシアですが、原油生産量を見る限り高水準をたもっています。
 そのほかのチェック国としてサウジアラビアがあります。需要が緩くなるなら普通は減産しますが、OPECサウジアラビアは減産ではなく、価格を下げ、シェアをとる方向に動いているということでした。
 時期的にはこれから冬を迎えるので天候要因がどうなるか。また、11月27日に開かれるOPEC通常総会では原油生産の上限引き下げを模索するかもしれないとのこと。
 以上、参考にしてください。