武末高裕のECOTECH PRESS 技術を見に行く

環境技術と環境ビジネスの少し先を読む

紙のように作る、鉛筆の芯と古紙で作るフレキシブルな電極材料

 私の中では、今年上半期の興味深い技術トップ10に入る研究です。どこにでもある、ありふれた材料で高性能の蓄電材料が製造できからです。主要な材料は紙と鉛筆の芯。研究しているのは、大阪大学産業科学研究所特任助教の古賀大尚氏です。
 紙の原料はパルプ繊維です。鉛筆の芯は黒煙です。これはグラファイトのことで、炭素の結晶構造を持つシート状のグラフェンが何層にも重なった構造をしています。グラファイトを酸化処理するとグラフェンを1枚1枚はがすことができます。
 古賀氏はこの2つ材料から電気二重層キャパシタ(スーパーキャパシタ)の電極を作りました。
 公開されている方法はこんな具体です。パルプ繊維を水に分散させ、そこにグラフェンを投入。いくつかの処理を行うと、パルプ繊維にグラフェンがくっついた状態になります。これを濾過すれば「紙」になります。あとは瞬間的に光照射をすると紙の電極材料が出来上がります。
 その性能はかなりなものでした。スーパーキャパシタの電極には一般に活性炭が使われています。その性能は活性炭の比表面積が大きいほど良くなります。古賀氏が作った紙の電極は従来の活性炭の約10倍の電気容量を記録しました。
 ありふれた材料を使う以外にも、この技術には際だった特徴があります。作り方は紙の製造工程とほぼ同じです。すなわち量産しやすいのです。
 もうひとつあります。古賀氏は再生紙のパルプ繊維からでも電極が作れると考えトライしました。結果は予想通り、できたのです。古紙が蓄電装置のキャパシタの電極に使えれば、古紙の価値は一気に高まるでしょう。紙の隠れた価値を掘り起こしたのです。
 この研究はセルロースナノファイバーの分野であり、製紙分野はもちろん、繊維、素材、電気・電子、リサイクルなど、様々なジャンルの企業の関心を呼ぶはずです。今後が気になります。