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スターリングエンジン発電機が家庭にやって来る

「予定より遅れているんですが、スターリングエンジンが電気事業法の一般用電気工作物として認められることになりました」

 そう、誇らしげに説明したのはNPO法人の日本スターリングエンジン普及協会の理事の方でした。
 どういう意味かというと、電気事業法が改正され、小出力のスターリングエンジン発電機なら、家庭用燃料電池エネファームのように、一般の家庭でも容易に導入できることになる、のです。

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(家庭用コージェネシステム。開発はSECエレベーター)

気体を膨張・圧縮して発電する

 スターリングエンジンといわれて、すぐに理解できる人は本当に少数でしょう。そのメカニズムはシリンダー内の気体(作動流体)を加熱、冷却することで、気体を膨張、圧縮。気体の体積の変化によってピストンのような機構を作動させる、これが基本的な仕組みです。
 この原理は以前から知られており、エンジンも開発されていたのですが、世の中に広まる気配はありませんでした。その原因はいろいろあるのですが、法律上の制約もそのひとつです。

スターリングエンジン発電機が家庭や商店に置けない理由

 電気事業法では発電、送電などに関わる設備を電気工作物と呼んでいます。これはさらに事業用電気工作物、一般用電気工作物に分けられます。
 事業用電気工作物は発電所や自家発電のための発電、送電設備などのことで、工事計画の届け出や専門技術者の選任などが必要になります。
 これに対して、一般用電気工作物は家庭や商店などでも使用できる、電圧が小さく、比較的安全性の高い電気工作物です。具体的には、火力発電、水力発電風力発電太陽電池燃料電池が認められています。
 では、スターリングエンジン発電機はどんなポジションにあるのか。これまでは、事業用電気工作物としてのみ扱われていました。それが、たとえ出力1kW程度のものであっても、設置する場合は工事を届け出て、なおかつボイラー・タービン主任技術者の選任が必要なのです。
 スターリングエンジンを売り出したい事業者にとっては、この規制は大きな壁となっていました。

家庭向けのコージェネタイプも登場

 しかし今回、施行規則の改正が検討され、作動流体に可燃性ガスを使わない、10kW未満の小出力のスターリングエンジン発電機については、一般用電気工作物扱いを認め、工事計画届け出、ボイラー・タービン主任技術者の選任は不要にしましょう、となったのです。
 このことに関係者が喜ぶのは当然でしょう。これでスターリングエンジン発電機を家庭に導入するための壁がひとつなくなり、市場がぐっとひろがることになるのですから。
 5月末に開かれたnew環境展では家庭用コージェネレーションタイプ(写真)、廃熱利用の7.5kWのスターリングエンジン発電機などが展示されていました。いずれも、今回の法改正を意識した装置です。
 実は今年3月に改正に必要なパブリックコメントが行われる予定でしたが、スケジュールが遅れており、改正が決定するまでにはもう少し時間がかかりそうです。

10kW以上も規制緩和の動きで、要注意市場になる

 また10kW以上のスターリングエンジン発電機につていは、規制緩和の検討が今後、行われ、平成27年4月以降に「必要に応じて電気事業法施行規則(別表第二)改正」するスケジュールの予定ということです。
 規制緩和をきかっけに、スターリングエンジン発電機の開発や製造がいろいろなメーカーで行われることになると予想されます。競争が起これば、市場は活気づきます。今後、この市場は要注意になるでしょう。