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技術の現場から技術の先を読む    by MediaResource

バイオテクノロジーだって、環境技術だ。

 先週はBIO tech 2014がありました。メインは医薬品のイベントでした。医薬品は私のテリトリーではありませんが、探すと、環境分野に関連するユニークな研究はいくつもあるものです。

生ゴミから作る黒い物質が燃料電池になる

 一見すると容器の中身は黒い液体です。一度ふって、机の上に放置しておくと、容器の底に黒い粒粒が沈殿してきました。これは活性炭ではありません。酸素、チタン、リン、鉄が主成分の物質ということです。

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 驚くのはここからです。この黒い物質は嫌気性の微生物が作ったものであり、しかも何と、電気を蓄電・放電する機能を持っていること。つまり電極の材料になるというわけです。発見したのは静岡大学大学院の二又裕之教授です。

電子顕微鏡で見ると、微生物の細胞の周りに黒い物質ができるような感じですね。触ると硬い。まだ、詳しい構造は分かっていません」

 蓄電・放電できる物質を作る微生物の発見は世界でも初めてのことだそうです。この微生物は嫌気性で有機廃棄物をエサにしているとのことでした。つまり、生ゴミを食べて、なおかつ発電する物質を作る、実にユニークな微生物なのです。

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(これが微生物が作る黒い物質)

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(よく見ると粒状であることが分かる)

 二又教授は燃料電池の負極にこの黒い物質を使って実験しています。すなわち、微生物燃料電池です。現状では鉛電池の10分の1から5分の1の能力とのことでした。

 どんな条件であれば、微生物は黒い物質を効率よく作るのか。培養条件はいくつか見えているそうです。同時に、蓄放電材料としてどこまで性能をあげられるかがテーマということでした。

 微生物が生ゴミを食べて、発電する。ゴミ問題という日本の社会的な背景をきっちり抑えた研究であり、かつ、テクノロジーとしての夢も広がります。