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武末高裕のECOTECH PRESS 技術を見に行く

環境技術と環境ビジネスの少し先を読む

ブルーチーズの青カビが稲わら、麦わらから自動車の燃料を作る。

 JSTの2次電池次・世代エネルギー新技術説明会が2月18日、開催されました。報告されたのはリチウムイオン2次電池、バイオマス太陽電池燃料電池、生分解性樹脂の燃料化など12件の新技術です。私は7件の報告を聞きましたが、印象に残っているものをピックアップして紹介しておきます。

ブルーチーズの青カビが稲わら、麦わらから自動車の燃料を作る。世界最強を上回る能力の酵素を見出した中部大学。

 世界最強を凌駕する能力の酵素で、稲わらからバイオエタノールを製造する。これがこの技術のキャッチです。世界最強といわれると、やっぱり気になります。

 ここでいう世界最強なのは、デンマークに本社があるノボザイムズ社(novozymes)の酵素群です。商品名は「CTec2」。その糖化能力が市販されている酵素としては世界最強なのです。それよりもうちの酵素のほうが強力だと、中部大学応用生物学研究科の倉根隆一郎教授は強調しました。この酵素はブルーチーズなどを作る青カビ菌の仲間から新たに見出したということです。

 倉根教授の酵素がなぜ最強なのか。前提として糖化する対象は稲わら、麦わらなどの草本系バイオマスです。実験では、稲わら、麦わらの場合、CTec2の4分の1の量で同等以上の糖化(分解)能力を発揮したからです。しかも前処理は稲わら、麦わらを粉砕するだけ。ここも特徴です。シンプルなのです、方法が。

 少し技術的背景を説明しておきます。木や草はリグニン、セルロース、ヘミセルロースで構成されています。バイオエタノールを作るにはセルロース、ヘミセルロースを単糖に分解する必要があります。単糖にすれば発酵させてバイオエタノールが製造できます。

 しかしセルロース、ヘミセルロースはリグニンで固定された状態にあります。これらを分解するにはリグニンが邪魔なのです。そこで一般的な酵素法では、前処理としてアルカリなどでリグニンを除去。その後で糖化します。このため廃液処理は不可欠となります。

 一方、倉根教授の前処理は稲わら、麦わらなどを粉砕するだけです。そこに新発見した酵素を加え、温めればいいのです。

 バイオエタノール生産では酵素が全体のコストの半分を占めるといわれています。つまり酵素量が少なければ製造コストは安くなります。倉根教授の酵素はCTec2の4分の1の量ですから、その分、コストは安くなります。また、直接糖化しているため、廃液処理は不要。これもコスト削減に働きます。

 酵素法は強力な分解能力が必要との考えから、酵素遺伝子組み換え技術で作ることを推進する研究者も多くいます。しかし求める酵素が自然界にいる微生物から得られるのであれば、そのほうがいいに決まっています。

 現状はラボレベルのデータです。教授の希望はバイオマスエネルギーの一貫プロセスを持つ企業や、酵素ビジネスを展開したい企業などと提携し、スケールアップした装置での共同研究です。なお、この技術は未公開特許です。

JST新技術説明会。https://www.jstshingi.jp