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アメリカのFAAは航空機材料にマグネシウム合金の使用を解禁へ。俄然注目集める熊本大学のマグネシウム合金。

 2013年2月、私は熊本を訪ねました。熊本大学の河村能人教授が発見したKUMADAIマグネシウム合金の取材です。そして昨日、1年ぶりに河村教授と会うことができました。2月5日に開かれたJSTの地域結集事業成果報告会で河村教授は、発見したKUMADAIマグネシウム合金の量産化までの道筋を報告したのです。

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 地域結集事業成果報告会(東京秋葉原

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KUMADAI マグネシウム合金

 報告会の話の本筋は熊本県、地元企業、熊本大学がいかに連携し、KUMADAI マグネシウム合金をものにしたのか、でした。しかし、私は、こっちの話のほうに強く惹かれました。アメリカのFAA(連邦航空局)はこれまで航空機の材料にマグネシウム合金の使用を禁じていました。それを近々、解禁するというのです。

 マグネシウム合金はデジカメやパソコンといった製品に導入されつつあります。しかし、FAAは民間航空機の材料として認めていませんでした。なぜか。マグネシウムは発火しやすく、危険だと判断されていたからです。それが、なぜ方針を転換したのか。

 昨年2月、河村教授は2種類のKUMADAIマグネシウム合金のサンプルをFAAに送り、耐熱試験を依頼しました。1カ月後に結果が知らされました。その内容は、KUMADAIマグネシウム合金はFAAが策定中の燃焼試験の基準を簡単にクリアした、というものでした。

 KUMADAIマグネシウム合金は耐熱と不燃の2タイプがあります。不燃はその名前の通り燃えません。私はビデオで見ただけですが、不燃のマグネシウム合金をバーナーで加熱する様子が映っていました。バーナーの温度は1100℃を越えていました。沸点を超えたマグネシウム合金はグツグツ沸騰していましたが、燃えません。これは驚くほかありませんでした。そしてKUMADAIマグネシウム合金は2タイプともにFAAの基準に合格したのです。

 イギリスや韓国などでも難燃性のマグネシウム合金は開発されていますが、800℃程度止まりです。KUMADAI マグネシウム合金の不燃タイプはまさに世界トップの不燃材料なのです。言い換えれば、FAA基準に合格する最初のマグネシウム合金となる可能性があるわけです。

 マグネシウム合金の大きなターゲットは航空機や自動車です。その巨大な市場のひとつの扉が開きつつあるわけです。B787の機体に使われている炭素繊維は東レ。その最先端の航空機の舞台に熊本発のマグネシウム合金が立つ、そんな光景が目の前に開けているのです。

 ちなみに、耐熱タイプは熊本県の不二ライトメタルが量産工場を立ち上げています。丸エム製作所は不二ライトメタルが造ったKUMADAIマグネシウム合金を使って、ネジを製造。今年春から発売します。河村教授は言いました。

マグネシウム合金の新時代がやってくる」

 実に楽しみです。

<まとめポイント>