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技術の現場から技術の先を読む    by MediaResource

電力と一緒にモノやサービスを売る時代が、積水ハウス、東芝、ホンダの連携の先に見えてくる。

 11月13日に改正電気事業法が成立し、本格的に電力の自由化が動き出しました。スケジュールでいえば、電気事業法は3ステップで改正され、2020年までを目標として電力の自由化が進められることになります。

 では、なぜ積水ハウス、東芝、ホンダの連携が電力の自由化と関係するのでしょうか。それは電力の自由化によって、発電の自由、送配電の自由、小売りの自由の「3つの自由」が担保されるからです。その結果、様々な新しいビジネスが生まれる可能性、いや間違いなく生まれるからです。そういった視点で見ると、違和感のない3社の連携なのです。

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(積水ハウス、東芝、ホンダ合同ブース)

 電力の自由化ですぐに思い浮かぶビジネスモデルは電気以外のエネルギー産業が一般の家庭にも電気を売ることです。東京ガスや大阪ガスのようなガス会社がガスと一緒に自社で発電した電気を家庭に販売するはずです。しかしそれはビジネスモデルというほどのものではありません。

 では、どんな形態なのか。端的に言うと、電力と一緒にサービスやモノが販売される時代になるということです。

 まずは住宅メーカーです。住宅メーカーは太陽光発電などでエネルギービジネスにすでに参入しています。これに電力の自由化が結びついてきます。たとえば、分譲住宅や住宅団地の販売と同時に、電力の小売りも行うサービスをセットにするわけです。

 分譲マンションなら、簡単にそれが実現できるでしょう。うちのマンションを買えば、安い電気が買えますよと。それを一戸建て住宅の購入者にも広げるわけです。 

 稼げる家庭の燃料電池。そんなキャッチが生まれるかもしれません。自宅にエネファームのような家庭用燃料電池を据え付け自家発電し、自家消費しきれなかった電気を他の家庭に売るわけです。しかしそんなことは面倒だ、誰か代行してくれということになって、それをマネジメントするサービスも登場するでしょう。

 要するに、燃料電池などの分散型電源を導入した個人の家庭でも、それを利用したビジネスを展開できる。節電ではなく、エネルギービジネス。それを個人の家庭で手軽に行える、そういった視点のサービスです。「稼ぐ家」です。

 きっと銀行や証券会社もそこに絡んでくるんでしょうね。住宅ローンと売電事業をセットにしたような金融商品です。

 電気機器メーカーはどうでしょうか。深夜電力は昼間よりも安く利用できます。その安い電気を効果的に使う機能が冷蔵庫や洗濯機などの家電製品に当たり前のように取り付けられるかもしれません。

 大型の蓄電器を住宅に据え付けるサービスも登場するでしょう。安全性を考えると大型リチウムイオン電池よりも、電気を物理的に貯める仕組みを持つ大型キャパシタが関心を集めるかもしれません。リチウムイオン電池は化学的に電気を貯めるため、どうしても発熱があります。そのリスクを抑える技術は不可欠でしょう。

 もちろん、これら電力に関係するサービスに対して、住人は何もする必要はありません。すべてはエネルギーマネジメント会社が管理し、その成果、たとえば売電収入とかを家庭に分配するからです。

 自動車メーカーはどんな組み方ができるでしょうか。今回の3社合同ブースに、ホンダは燃料電池車から住宅に電力を供給できる仕組みを展示していました。非常用電源としての燃料電池車の利用ですね。それがイメージしやすいでしょう。

 燃料電池車ではありませんが、トヨタによれば、プラグインハイブリッド車1台で、一般家庭が日常的に使用する電力量の約4日分がまかなえるとのことです。当然のことながら、燃料電池車を家庭の主たる電源にするといったアイデアも出てくるわけです。

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 (ホンダの水を電気分解して水素を製造する装置)

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(ホンダの燃料電池車)

 想像するに、1日のうち、自動車を利用時間は一般家庭ではさほど多くはないでしょう。ならば、ムダに駐車している自動車を分散型発電所として利用するのです。燃料の水素は水の電気分解で供給します。ホンダは水の電気分解による水素供給装置を開発しています。電気分解の電力は太陽光発電などを使えばいいのです。その水素を使って燃料電池車を動かし、発電。自家消費してもいいし、売電してもいい。水エネルギーシステムがここに完成するわけです。

 燃料電池は廃熱もあります。これも利用しましょう。そういえば、ホンダは10月に千葉県の幕張メッセで開かれたCEATECで、巨大なヤカンを展示していました。オートバイの廃熱でお湯を沸かす、それをイメージした展示物でした。燃料電池車ならそれも実現は可能なはずです。

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(10月に開かれたCEATEC。ホンダ伊東社長)

 私のような人間でも、いろいろな妄想できるわけですから、すでに様々な企業が電力の自由化にともなって生まれるだろう、複合サービス的エネルギービジネスを検討していることは想像できます。

 そこには電力関係企業といった枠組みはすでにありません。異業種が連携する、そんな姿が当たり前のように見えるのです。