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「水素社会の実現にむけてわれわれ3社はコミットするんだと、その強いメッセージを今回、お出ししたつもりだ」  積水ハウス、東芝、本田技研のトップ3人が語らなかった、もうひとつの狙い=東京モーターショー

 東京モーターショーに出展した企業の間で、話題になったイベントがありました。11月21日に開かれた積水ハウス・阿部俊則社長、東芝・田中久雄社長、本田技研工業・伊東孝紳社長の、トップ3人による共同記者会見です。3社はモーターショーに合同ブースを出展しました。住まいと家電、車が連携し、もっと安全で安心、快適で、楽しい未来の暮らし、生活を提案するというのがブースのコンセプトでした。

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 左から積水ハウス阿部社長、東芝田中社長、ホンダ伊東社長。

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 住宅、電機、自動車という異業種の、しかもそれぞれの最高経営責任者が同じテーブルについて(といってもテーブルはなかったけど)、会見する光景はなかなか見られるものではありません。ある大手電機メーカーのバッテリー開発の部長はこんな感想を呟いていました。

「驚きました。バッテリービジネスは自動車のシステム、スマートコミュニティ、いろいろな分野に関連してくるので、異業種との連携は重要になってきます。3社で何をやるんでしょうかね」

 つなぐキーワードは水素です。積水ハウスは家庭用燃料電池の設置件数では、半分のシェアを持っています。東芝は家庭用燃料電池システムのエネファームを開発、販売しています。水素製造から貯蔵、供給までの一貫した技術開発を進めています。ホンダはもちろん燃料電池自動車です。

 ではなぜ彼らは連携したのでしょうか。ひとつは、ビジネス上の取り引きがあったから。積水ハウスは東芝のエネファームを導入しています。東芝は燃料電池リチウム電池などを開発、製造。そのバッテリーはホンダも使っています。しかしそれだけではないでしょう。なぜなら、彼らが目指すのは水素社会の実現だからです。

 社会というのは様々な人々、企業の集合体によって形成されています。ですから、新たな市場を開拓するのなら、異なるノウハウ、異なる目線、異なる発想を持つ人たちが連携したほうが、ベターである。そういう判断が当然出てくるわけです。その意味では3社の連携はあるべき姿といってもいいでしょう。

 もっとも、彼らはこの連携にどこまで本気なのか。それは少し気になるところでした。しかし3社のトップたちが一堂に会した、この事実は重要です。東芝の田中社長はこうコメントしました。

「水素社会の実現にむけてわれわれ3社はコミットするんだと、その強いメッセージを今回、お出ししたつもりだ」

 水素社会の実現。これはきわめて重要なテーマですが、ビジネスの観点からすると、全く違ったビジネスモデルがそこに見えてきます。

 彼らは企業として何を目論んでいるのか。いろいろな見方、解釈があるとは思いますが、私は「電力の自由化’」も見据えているはずだと、理解しています。なぜなら電力の自由化によって、様々な形態の新サービス、新ビジネスが生まれる可能性があるからです。