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技術の現場から技術の先を読む    by MediaResource

世界初! 性転換しないはずの魚を雌から雄に変えることに成功

 なんというか、すごい研究成果です。本来は性転換しないはずの脊椎動物で、成熟した卵巣を精巣に換えることに世界で初めて成功したのです。雌から雄に、人の手で変えたわけです。

 成功したのは沖縄美ら島財団・総合研究センターの中村將参与と愛媛大学南予水産研究センターの長濱嘉孝教授らのグループです。一生、性が決まっている魚種を人為的に性転換させた成功事例は過去にはありません。

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AI を投与しなかったティラピアの卵巣

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AI処理後のティラピアの卵巣(いずれの写真も中村將参与提供)

どのような方法で性転換を実現したのか。

 実験した魚はティラピアとメダカです。成熟した2種の雌に女性ホルモンの生成を抑えるアロマターゼ阻害剤(AI)を1日2〜3回、餌に加えて長期間投与し、体内で作られている女性ホルモンを出来なくしました。

 するとティラピアはおよそ6ヶ月、メダカは2ヶ月後で卵巣が精巣に置き換わることを確認しました。さらに、雌から雄へ転換した精巣はちゃんと機能し、精子を産出することも分かりました。この精子を使って卵と受精し、子供が生まれたのです。子供は全て雌でした。

なんのために性転換の研究をしたのか。

 魚の性決定の仕組みが明らかなになれば、魚を繁殖させたり、養殖したりする場合の雌雄の産み分けに応用できます。また卵や卵巣を食用とする魚や、雌よりも雄の体が大きく利用価値のある魚などの養殖技術に応用できます。

 研究グループは今後、他の魚でも実験を行う計画です。より研究が進めば、希少種の保存にも貢献できる可能性もあります。

 ところで、この技術は魚以外の生き物にも転用できるのでしょうか。それが気になります。

ニュースリリースhttp://prw.kyodonews.jp/prs/release/201311076112/