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環境技術と環境ビジネスの少し先を読む

精緻な農業に競争力をつける、新技術、新サービスをさがせ

 アグリビジネス創出フェア2013が10月23日から東京ビッグサイトで開催されました。

 TPP(環太平洋経済連携協定)との絡みなのでしょう、国は「農業の競争力強化」を掲げて、様々な施策を実行しています。それは言い換えるなら、「競争力強化」に関係する事業には予算を手厚くするということでもあります。

 日本の経済を引っ張ってきたのは自動車、電子機器などのメーカーでしたが、次は農業、漁業、林業のバイオマスの世界が牽引する。そういう側面もあります。

 日本の篤農家のノウハウ、知恵は世界を席巻した日本のモノづくり産業と共通する、生真面目で、一途で、精緻さがあります。というわけで、農業ビジネスが焦点となっています。

  新機能食品、植物工場、陸上養殖、ロボット、バイオマス、エネルギー、物流などなど、幅広いテーマで、大学、高専、研究機関、企業が出展していました。その中で、いくつか気になった技術を紹介しておきます。

トラクターと連動したGPSシステムが北海道で拡大中。理由は経費の削減。

 新しい技術や製品にまっさきに手を出す農家は少なく、よほど目に見える効果がないと彼らの関心を惹くことはできません。ですから、トラクターとGPS(ニコン・トリンブル製)を組み合わせたシステムには、さほど関心はありませんでした。ところが、説明員からは、北海道の現役農家は、みなさんGPS農法のことは知っていますよ、と言われました。

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写真;ニコン・トリンブルのGPSシステム

 トラクターにGPSを取り付ければ、いまどこにいるのか、その位置情報を正確に把握できます。それが、どうして農家の心をつかんだのか。

 答えは明快でした。GPSを導入したことで肥料や薬剤のコストが削減できるようになったから、というのです。

 農家向けGPSが市場に投入されたのは10年ほど前から。しかし、急速に広まったのは2008年頃からだということでした。理由は肥料価格の高騰です。当時、国際的に窒素やリンなど肥料原料の価格が高騰し、農家は経費削減に四苦八苦していました。どうやって肥料経費を抑えるか。GPSシステムの営業マンたちはそこを突いたのです。

 こういうことです。北海道では、広大な農地をトラクターで縦横に走り回りながら、肥料や農薬などを散布しています。ところが、肥料を農地に隙間なく撒こうとするため、どうしても、すでに撒いた場所にも撒いてしまうそうです。つまり、同じ場所に二度、撒いてしまうわけです。人が運転するから、どうしてもそういったことが起こります。

 狭い農地ならそれほど問題にもならないでしょう。しかし1戸当たりの平均耕地面積が20ヘクタールを越える北海道では、無視できないムダな経費になってしまうのです。

 しかしGPSを使えば、トラクターの位置情報はより正確になり、肥料などを散布すべき場所の誤差は大幅に小さくなります。ニコン・トリンブルのGPSの場合は、専用のGPSアンテナを使うと位置情報の誤差が数十センチ以内に収まるそうです。トラクターの運転はモニターに表示されるガイドを見ながら行います。走行位置が正確になれば、肥料を撒く場所も正確になり、ムダな散布が減るわけです。その結果、従来よりも15%から20%の肥料や薬剤のコストが削減できたといいます。

 GPSのシステムは50万円。これだけの投資で肥料代が2割削減できるのなら、と導入する農家が一気に増えたというわけです。費用対効果がはっきりしていたのです。

 さらに位置情報の精度を上げれば経費もおさえられると、GPSの基地局を導入した町もあります。北海道の深川市の隣にある妹背牛町(もせうし)では、今年、町が基地局を設置し、GPS農法を支援しています。基地局とトラクターのGPSを連携して正確な位置を割り出すというもので、RTKーGPSレベラ・システムと呼ばれています。

 このシステムはトラクターの位置情報を2,3センチ程度の誤差でとらえることができるといいます。精度が上がれば、肥料や薬剤の投入量がさらに削減できることになるでしょう。

 また、均等に肥料などが散布できるため、農作物の育ちや品質のムラも減るといった効果も期待できるそうです。ちなみに基地局の費用は2310万円でした。

 要するに、新技術は費用対効果を明確に示せるものでなければ、ビジネスにはならないということなのです。

(続きます)