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技術の現場から技術の先を読む    by MediaResource

FITが変わる、再エネ市場は変わるか?

 PVJapan 2016、再生可能エネルギー世界展示会がパシフィコ横浜(6月29日〜7月1日)でありました。以前に比べると展示件数は減った印象があります。しかし再生可能エネルギー市場が縮小しているわけではありません。むしろ、次のステージへ移行する転換の時期。ちょうどそこにさしかかっているともいます。
 いわゆる改正FIT法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法等の一部を改正する法律)が成立し、2017年4月1日より固定価格買取制度は変わります。
 FITはあくまで再生可能エネルギー市場を切り開くための駆動装置です。制度がずっと続くわけではありません。その間、自立的な市場をいかにつくりあげるか。

 でないと、いずれ、うち捨てられた太陽光パネルがあちこちに晒される事態になるでしょう。新たな再エネのビジネスモデルが求められています。

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 写真はスカイロボットの太陽光パネル掃除ロボットです。ロボットがパネルを左右、上下に移動しながら純水で汚れを洗い流します。ロボットはリースで提供されます。メンテナンスビジネスですね。

 

2016年7月 見に行く

 夏です。今月もいろいろあります。何度もいいますが、技術は直接、確かめることをおすすめします。開発者の話を聞いて、現物を見て、動かす、触る、食品なら食べる、体験すること。ネットの情報だけでは分からない、技術のツボが見えてきます。
 講演会、展示会などに参加する場合は必ず、事前に主催者、リンク先などで詳細を確認してください。シンポジウムなどは満員、内容の変更、中止もあります。あくまで自己責任でご確認ください。

●国際モダンホスピタルショウ2016 (第43回)
会 期 2016年7月13日(水)~15日(金)
会 場 東京ビッグサイト
主 催 一般社団法人 日本病院会一般社団法人 日本経営協会
http://noma-hs.jp/hs/2016/

●総務・経理・人事ワールド2016
同時開催展
第7回 省エネ・節電 EXPO
第11回 オフィスセキュリティEXPO
第10回 オフィス防災EXPO
第6回 オフィスサービスEXPO
第4回 HR EXPO ~人事労務・教育・採用 支援展~
第3回 ワークスタイル変革EXPO
第1回 会計・財務EXPO
会 期 2016年7月13日(水)〜15日(金)
会 場 東京ビッグサイト
主 催 リード エグジビション ジャパン
http://www.eco-expo.jp/tokyo/

●高磁場・高感度NMR利活用促進のための天然物関連シンポジウム 2016
日 時 2016年7月19日 (火) 13:00 ~ 17:10
締切日 シンポジウム:7月14日(木), 懇親会:7月11日(月)
会 場 理化学研究所・横浜キャンパス 交流棟ホール1階
     (〒230-0045 横浜市鶴見区末広町1-7-22 )
主 催 理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター NMR施設
共 催 日本化学会、日本生薬学会
後 援 NMR共用プラットフォーム
http://www.ynmr.riken.jp

●メンテナンス・レジリエンスTOKYO 2016
同時開催展
プラントメンテナンスショー
労働安全衛生展
インフラ検査・維持管理展
事前防災・減災対策推進展
防犯・セキュリティ対策展
建設資材展
会 期 2016年7月20日(水)~7月22日(金)
会 場 東京ビッグサイト
主 催 公益社団法人日本プラントメンテナンス協会、日本メンテナンス工業会、社団法人 日本能率協会
http://www.jma.or.jp/mente/index.html

●気象・環境テクノロジー展
会 期 2016年7月20日(水)~7月22日(金)
会 場 東京ビッグサイト
主 催 一般社団法人日本能率協会
後 援 気象庁環境省
http://www.jma.or.jp/meteo/outline/index.html

文化財保存・復元技術展
会 期 2016年7月20日(水)~7月22日(金)
会 場 東京ビッグサイト
主 催 一般社団法人日本能率協会
http://www.jma.or.jp/bunka/

●施設園芸・植物工場展 2016
会 期 2016年7月27日(水)~29日(金)
会 場 東京ビッグサイト 東5・6ホール
主 催 一般社団法人 日本施設園芸協会
後 援 農林水産省経済産業省全国農業協同組合中央会(JA全中)、全国農業協同組合連合会(JA全農)、農林中央金庫、(一社)全国農業会議所、(公社)全国農業共済協会、(株)日本政策金融公庫
共 催 アテックス株式会社
http://www.gpec.jp/index.html

●アグリ・ビジネス・ジャパン
同時開催展
食農・就農交流展
稼げる農業ビジネスEXPO
会 期 2016年7月27日(水)~29日(金)
会 場 東京ビッグサイト
主 催 アグリ・ビジネス・ジャパン実行委員会
共 催 (一社)日本施設園芸協会、アテックス(株)
http://www.agri-business.jp

●第13回地球環境シリーズ講演会「渦に満ちた海洋を知る」
日 時 2016年7月29日(金)13:00~17:00(開場12:30)
会 場 ヤクルトホール(東京都港区東新橋1-1-19)
主 催 国立研究開発法人海洋研究開発機構JAMSTEC
後 援 文部科学省
http://www.jamstec.go.jp/j/index.html

JST新技術説明会
07/05(火) 13:30 ~ 15:55
首都大学東京 新技術説明会
07/07(木) 12:55 ~ 15:30
東北大学 新技術説明会
07/12(火) 09:55 ~ 14:55
AMED 産学共創基礎基盤研究プログラム 生体イメージング 新技術説明会
07/14(木) 09:55 ~ 11:55
材料分野 新技術説明会
07/14(木) 12:55 ~ 15:25
ライフサイエンス分野 新技術説明会
07/21(木) 09:50 ~ 16:00
大阪大学 新技術説明会
07/26(火) 09:55 ~ 16:00
医療・福祉・創薬 新技術説明会
07/28(木) 12:30 ~ 15:55
つくば産学連携強化プロジェクト 新技術説明会
http://www.jst.go.jp

細菌レベルの小さなミストで害虫駆除、除菌。農商工連携事業

 家庭用の加湿器に見えますが、販売元の(株)のなかは「世界最小の微小液体粒子」の発生装置とアナウンスしていました。ミストのサイズは0.2〜0.4マイクロ㍍が9割を占めています。データは計測分析装置のマルバーン社の測定値ということでした。細菌とほぼ同じくらいのサイズなんだ。

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(奥に見えるのが試作中の噴霧装置。手前にあるのがシリンダー)

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(シリンダーの中。中央の孔から噴霧。フタにあたって外へ放出されます)f:id:take4e:20160629205408j:plain

(フタです)

 この製品は宮崎県の、のなか、ウィズダム、テクノマートの3社による農商工連携事業です。平成27年度に農水省経産省の新連携支援制度の認定を受けています。
 どうすればそんなに小さなミストができるのか、当然知りたくなります。構造はいたって簡単です。筒状のシリンダーの中央に棒状のノズルがあります。この中に空気を供給するとシリンダー内の液体がノズルに押し込まれ、先端から噴霧されます。

 この時、霧がフタにあたって大きな粒子は落ちて液体に戻り、細かな微粒子だけがフタの隙間から外へと放出される、そういう構造になっているそうです。
 資料データを見せてもらうと、宮崎県農業試験場の実験がありました。ピーマンを実験ハウス(容積は75リットル)内に入れ、そこに害虫のタバココナジラミを投入し、付着状態を調査しています。

 この装置を使ってハーブ系の忌避剤を2時間で2cc噴霧した場合は、タバココナジラミはほぼいない状態になったそうです。噴霧しない場合は、大量のタバココナジラミが付着していた、とありました。農業では農薬など、薬剤の使用量を減らせる可能性があります。
 装置の発売は今年秋を予定しています。医療や介護施設などで除菌、殺菌といった使い道もありそうですね。

 

立って倒れて駆動する、四角い駆動装置。

 キューブの形をしていますが写真の通り、1点で立っています。ぴくりとも動きませんでした。
 一瞬、紐でつるしているのかと思いましたが、そんな仕掛けはありません。宇宙航空開発研究機構(JAXA)が研究開発し、三木プーリが造った超小型三軸姿勢制御モジュールです。サイズは1辺が10センチです。

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(超小型三軸姿勢制御モジュール)

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(励磁作動形ブレーキ。これでモータを止めます)

 なんで立つのか。これが一番の気になる点です。要はこういうことでした。自転車で走っている時に急ブレーキをかけると前のめりになって、後輪が浮き上がることがあります。あれと基本的には同じ仕掛けなのだそうです。なんとなく、分かりました。
 キューブの面部分には3つの姿勢制御用ホイールとリング状のブレーキが取り付けてあります。ホイールのモータが回っている状態でブレーキをかけると、瞬間的に大きなトルクが発生し、立ち上がるわけです。
 立ち上がっては倒す、その繰り返しを行えば駆動できます。四角い箱で密閉すれば水、ホコリが入らない駆動装置ができあがります。

 用途は駆動装置、移動用ロボット、ロボットのアクチュエータなど。宇宙だけではなく、地上でも使えそうですね。おもしろい。

低圧力で泡をつくる、マイクロバブル発生装置

 日本ものづくりワールド2016(6月22日〜25日)には大手企業だけでなく、地域の中小企業が数多く出展していました。その中から、目についたものを。
 これはマイクロバブルの発生装置です。愛媛県新居浜市の神野工業(http://jinnokogyo.com)が開発、製造しました。
 マイクロバブルが大量に発生すると水槽の中が白濁したような状態になります。泡は0.3Mpa程度の圧力で発生させていました。装置は100ボルトで動きます。
 神野工業は機械製作、金属加工のメーカー。マイクロバブルを発生させる微細泡発生装置は特許を取得しています。

 指を水の中に入れると温度が高くなっていました。何度も泡を発生させたためだと、神野社長は説明しています。

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(発生装置のスイッチを入れる前)

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(マイクロバブルが大量に発生した状態)

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(微細な泡を発生させる心臓部)

水素ステーション用の熱交換器を拡散接合で造る、この技術が熱い

 いま密かに注目を集めている技術があります。拡散接合です。金属の板を密着させて高温で加圧し、原子レベルで接合させます。
 なぜ注目なのか。水素ステーション用の小型熱交換器に拡散接合が使われ始めたからです。水素圧縮機や、燃料電池車に水素を供給するディスペンサーなどで水素を急速充填すると、温度が上昇します。それを熱交換器で冷却し安全に充填するわけです。

 水素ステーションで使われる拡散接合タイプの熱交換器はシェアトップが神戸製鋼所。ついでベンチャー企業のWELCONが先行企業として知られています。WELCONは新潟市に本社のある、日本の企業です。設立は2006年。独自に拡散接合の研究を進め、装置も自前で開発する、注目のベンチャーでもあります。

 この市場に新たに参入したのが住友精密工業です。

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住友精密工業のマイクロチャンネル熱交換器)

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 住友精密工業のマイクロチャンネル熱交換器は岩谷産業水素ステーション用に供給しています。エッチング溝加工したステンレスの平板を積層して拡散接合しています。従来の二重菅方式に比べると約50分の1のコンパクトサイズになっています。

 水素ステーションはいま全国に約80基あります。これを国は2020年度までに160基。30年度には900基に増やすと、計画しています。

 この分野からは当分、目が離せません。

 

客室の電気を太陽光と水素で賄う「変なホテル」。ハウステンボスの狙いは

 ハウステンボス太陽光発電の電力を使って水を電気分解。発生した水素で燃料電池を動かすシステムを「変なホテル」に導入し、今年3月から運用しています。ホテルの客室の一部、12室の電気を太陽光発電とこのシステムで賄っているのです。

 システムは「H2One」と名付けられています。東芝が開発しました。なんで、ハウステンボスが導入したのか。スマートコミュニティJapan 2016で開かれたセミナーでそれが分かりました。

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(変なホテルに導入されたH2One。後ろのコンテナの中に収められている)

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 先にこのシステムの大まかな説明しておきます。主な設備は太陽光発電、蓄電池、電気分解水素製造装置、水素貯蔵タンク、燃料電池で構成されています。

 なんでこんなにいろんな装置があるかというと、季節によって運用を変えているからです。

 通常は、太陽電池で発電した電力をそのまま居室へ供給します。一部、余った電力は蓄電池にためておき、必要に応じて供給します。
 さらに、あまった電力を使って水の電気分解を行い、発生した水素を貯蔵。この水素で燃料電池を駆動し、その電力を居室へ供給します。燃料電池で発生した熱は温水つくりに利用し、これも居室で使います。

 電力の需要や供給は季節によって変わります。夏から秋にかけては太陽光発電の電力の供給が需要を上回るので、あまった電力は水の電気分解に使い、水素として貯蔵しておきます。
 秋から冬は太陽光発電の供給が需要を下回るので、貯めておいた水素を使って燃料電池で発電。その電力で不足分をカバーする、という仕組みなのです。
 システムはよく工夫されているのですが、実は私がもっとも驚いたのはH2Oneを実際に顧客が宿泊する客室で利用していたことです。
 ホテルはサービス業です。できるだけリスクは避けて、安定したシステムを選ぶというのが多いのではないかと、思ったからです。

 しかしハウステンボスはそうはしなかった。もちろん、何か起こった時のバックアップをちゃんと整備しているからこそ導入できるのですが。

 ハウステンボスはどんな狙いで再エネだけのエネルギー利用を考えたのでしょうか。

(つつく)